ボーイズラブ作品の感想ブログです。すきだなぁと思ったものについての他愛ないおしゃべりを置いてます。



拍手お礼

◆8/27、青い方程式に拍手下さった方、ありがとうございました。◆8/26、リンゴが落ちても〜 に拍手下さった方、ありがとうございました。雨の結び目をほどいてに拍手下さった方、ありがとうございました。◆8/22、Hybrid Childに拍手下さった方、ありがとうございました。◆8/19、間に合わなかった…100冊に拍手下さった方、ありがとうございました。◆8/17、不器用なサイレントに拍手下さった方、ありがとうございました。◆8/15、窮鼠〜 に拍手下さった方、ありがとうございました。◆8/14、リンゴが落ちても〜 に拍手下さった方、ありがとうございました。◆8/3、きみが恋に堕ちる、窮鼠はチーズの〜 に拍手下さった方、ありがとうございました。◆7月以前に頂いた拍手のお礼は、それぞれの記事の中に移させて頂きました。感謝。



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下(した)

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BL歴(たぶん)7年目の主婦。好きな本の感想を、好き勝手なタイミングで時々更新。こんな気ままなブログへご訪問下さってありがとう。

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空から雨が降るように
松前侑里/あとり硅子(ディアプラス文庫/新書館)


円(まどか)、周(しゅう)、律(りつ)。
これらは順に、主人公・受とその義兄たちの名前です。
続けて音読みすると、
「えんしゅうりつ=円周率」。
作家さんの遊び心に楽しくなると同時に
受の母親が亡くなる前にステキな縁を紡いで行ってくれたことにしみじみしました。

こちらは以前ブログに感想を上げた作品「雨の結び目をほどいて」の
続編および完結編になります。
前作とあわせてやっぱり大好きなお話で、飽きることなく繰り返し読み返しています。
本作では最後に年末年始のハワイ旅行へ出かけているのですが
そのお話がすごく甘くて温かく、ハネムーンと家族旅行と初海外旅行のいいトコ取りみたいな楽しい旅なのです。
作中と同じこの時期になるとつい読み返してしまうのですが、今年もまたバカンス気分に浸らせてもらいました。

受(愛称エンちゃん)の母親と義兄たちの父親が再婚することで得たにぎやかな家族、夏目家。
エンちゃんは次兄・周(しゅう)と内緒の恋人同士です。
もっとも当人たちは知らずとも、売れっ子漫画家の長兄・律(りつ)とそのアシスタントたちにはとっくにバレているのですが。
そのあたりの経緯は、前作に収録されている短編「Too Sweet」に描かれています。

「Too Sweet」では律の仕事の打ち上げということで、身内(兄弟とアシスタントたち)で居酒屋にやって来ています。
周は仕事で遅れて登場するのですが、その周がまだ顔を出していない一時のエピソードがメインです。
長兄・夏目律は、ペンネーム夏目リツ。彼とアシスタントたちで、通称・夏目組。
エンちゃんは彼らが修羅場になると消しゴムかけをしたり食事を差し入れたりしているので夏目組の一員だと言われ、みんなで景気よく乾杯します。
そうしてジュースをイッキしたつもりが実はサワーで…というお約束(笑)。
見事酔っ払って色々自爆するエンちゃんがめちゃくちゃカワイイです。
そのカワイイ酔っ払い君がバラした事実(周と恋仲であること)に青くなったり赤くなったりする夏目組の面々がこれまたすごく楽しい。
この時のエンちゃんをモデルに律が新キャラを思いつき、それがまたマンガの大ヒットに繋がって、今回のハワイ旅行となった訳です。

話は逸れますが、この夏目組のお兄さんたちが本当にいい味を出していて大好きなんです、私。
松前作品の中では異例?と思うくらい、男臭いというか、ちょっとムサイ(笑)雰囲気の彼ら。
修羅場の様子とか、ネタの為にあーだこーだ論じ合う姿とか、何か閃いたらダッシュで仕事部屋へ戻るところとか。
エンちゃんも言ってますが、面白いマンガを作るという本気仕事しているお兄さんたちは最高にかっこいいです。
挿絵のあとり硅子さんも脇キャラの彼ら一人一人丁寧に顔を与えてくれているので(前作「雨の結び目をほどいて」カラー口絵参照)、生き生きとした表情を思い浮かべることができます。

萌え満載のBL本を探すキイワードとして「アットホーム」という単語を選ぶことは本来の自分ならばありません。でも、このお話は数少ない例外かな?
主人公たちの恋を彩るものとして、このユーモラスな家族たちを抜きに語ることは出来ません。

旅の終わりが近づいてエンちゃんは
父親が単身赴任先から帰って一人寂しく年越をしていた事実に気がついて青くなります。
兄たちはペット(注:周はちょっと変わったペットを飼っています。エンちゃんにも猫がいます)のエサ係がいてくれて助かったと笑って流してしまうのですが。
帰国した彼らを「芸能人には会えたか?」とのんびり尋ねて迎えてくれたお父さんを見て、我が家はこれでいいのだと納得します。
羨ましいくらいに幸せな家族風景。
そして何気にイイ男ハーレム…。ず、ずるいぞ、エンちゃん〜! ←本音

でも本当は、羨む程幸せなのは、エンちゃんを迎え入れた年長の家族たちの方なのかもしれません。
夏目のお母さんは周が幼い頃に亡くなっているのですが、そのことは周自身がずっと引き摺っている哀しい出来事でした。
律もお父さんも傷ついた周をずっと見守ってきたようです。
前作で周はエンちゃんの縺れた心の糸をほどいてくれましたが、エンちゃん自身がまた夏目家の絆をむすび直してくれていたのでした。

ラブストーリー、家族もの。
それらのいいコト取りみたいな本シリーズ。
‘みんなで円(まる)くなって食卓を囲めるような家庭を’――
エンちゃんが生まれた時、お母さんがその名前に込めた願いそのままの光景があります。

表題作の「空から雨が降るように」はあらすじの通り、
周の昔の恋人があらわれて二人の間をひっかき回します。
その人物はエンちゃんの高校に臨時の英語教師として赴任して来ました。
(ちなみに周もエンちゃんの高校の英語教師です)
不思議と惹きつけられる魅力があって、それがまた苛立たしかったり腹立だしかったり複雑な気持ちにさせられます。
松前さんは不倫や二心といったものをストーリーに絡めてくる作風をお持ちなので、苦手な方にはちょっとツライかもしれません。
今現在の周にはエンちゃん唯一人であることは間違いないのですが、過去の恋人の存在もまた厳然たる事実として突き付けられてくるのってキツイですよね。

表題作のタイトルは
人を好きになるのは、雨に降られることに似ている――
という元恋人のセリフからきています。
濡れたくなければ傘をさせばいい、傘がなければ人に頼んで入れて貰えばいい、そして傘が役に立たないほど強く雨が吹きつけるときはただ濡れるしかない…。
抽象的過ぎるかもしれませんが、私はこのセリフが好きです。

恋する気持ちは自然で不可抗力。
二心は弱さ狡さからも生まれるけれど、しっかり自分の心を見つめることが出来たら、雨が降っても地はかえって固まるもの。
松前さん独特の作風から、私はそういったものを信じて読み取るようにしています。
手強くもステキな恋敵。その敵の去り方も、エンちゃんの見送り方も天晴れでした。

そしてやっぱり、あとりさんの挿絵も最高に天晴れ……。

松前作品の中でもっとも好きなお話、
シリーズその二作とも感想を書くことで改めてその好さを噛み締めることが出来ました。
本を読むことって面白い。大好きです。
今年からブログを始めたのですが、ご訪問下さった皆さまのおかげで楽しく過ごさせて頂きました。本当にどうもありがとうございます。
皆さまに心から感謝の念を抱きつつ、夏目家の言い方に習って、行く年にそろそろ別れを告げたいと思います。

2006年よ、

「行ってらっしゃい」。

雨の結び目をほどいて
松前侑里/あとり硅子(ディアプラス文庫/新書館)


梅雨が明けました。
夏休みもとうに始まっていたというのに、今年は本当に長かったですよね。
それにもかかわらずこの感想を書き上げるのに間に合わず
少々ヘコみ気味ですが、
どうしても7月中に……と願うことがありますので、更新させて下さい。

私は松前侑里さんのお話が好きなのですが、
中でもいちばん心に残っている作品が
雨に因んだタイトルのこちらの一冊。
2001年の刊行になっているので、少し昔の作品になります。

主人公(受)が高校一年生として新しい生活をスタートさせる所から
物語は始まっているのですが、その内情がちょっと複雑で…。
母親の再婚で新しい家族が出来て、
――父、兄ふたり(売れっ子漫画家の長男、英語教師の次男)――
賑やかな生活が始まるはずが、
――長男のアシスタント二名も同居――
結婚式の直前に母親が交通事故で亡くなり、
自分だけが家族に迎え入れられたという経緯があります。

母に代わって家事に奮闘し、英語の通訳者の道を志して邁進する主人公(受)、それを見守る次男(攻)と
ユーモラスな家族たちとの交情がとても温かなラブストーリー。

飄々とした寛容攻×攻に対してのみ意地っぱりワガママ受。

主人公は家族として引き合わされる以前から次男を知っていました。
駅で見かける、ひそかな意中の人だったからです。
落し物の定期券を拾ったことがあり、中に入っていた写真から
女性の存在があることを知り、
お近づきになることもなく玉砕済みでしたが…。

私は、受がこの次男を駅のホームで見初めた場面がとても好きで…。
あとり硅子さんが付けた挿絵(本文21ページ)と共に、
忘れがたいシーンとしてずっと心に留まっています。

それは、攻が迷子となった外国人の幼い少女へと救いの手を伸べる所に
受が遭遇する場面でした。
『きみのパパと僕、どっちがハンサム?』(注:英語)――
泣いていた女の子に向かって攻が投げかけた最初のひと声がこのセリフ。
女の子がちょっと笑って、攻の方が少しだけカッコいいと答えると
これからデートをしないかと誘います。
パパがいいって言ったらね、というその子の返事に
『じゃあ駅員さんに急いでパパを探してもらおう』と
笑って少女の手を取るのです。

昨今ならば未成年略取の疑いで通報されるかも…とか
余りにも気障…だとかのツッコミは無しでお願いしますね(笑)。

我らが日本語を通しての会話では
ちょっと出来過ぎに聞こえるかもしれませんが、
英語で見ると、そこに込められたやさしい気持ちを
そのまま素直に受け取れるような気がして……ことばって不思議だなぁと思いました。

この瞬間、受は恋に落ちた訳ですが、
私も同じくしてこの作家さんの魔法にかかってしまったようです。

洒落た会話は近年の松前作品においても堪能できますが、
この作品ではそれらが物語における心憎い演出というより
登場人物の優しさや温かさを裏付けるものとして、
しみじみと味わうことが出来ました。
私がこのお話をいちばん好きな理由もそこにあるかもしれません。

家事に勉強に頑張っている受ですが、攻への秘めた想い――
玉砕した今も募るばかりの恋慕わしさに一杯いっぱいで可哀そうなくらい…。
決して振り向いてもらえない大好きな人と、家族として同じ屋根の下で
暮らさなければならないってキツイですよね。
同性に惹かれる自分が後ろめたかったりすることもあって、
主人公の心はたくさんの鎖に縛りつけられてギュウッと縮こまっています。

攻と家族になる自信がなくて、母親の再婚に
本当は手放しで祝福できなかったこと。
ウェディングドレス選びに付き合うよう誘われたのを断って、
雨の中を一人出かけて行く母親の車を見送ったのが
最後の別れになってしまったこと。
尽きぬ後悔が受をさらに苦しめます。
その為つい日々の戸惑いや苛立ちをそのまま攻にぶつけてしまうのですが、
攻はそんな受のSOS信号をちゃんと受け止めてくれるのです。
そして、縺れた心をほどく魔法のことばを教えてくれるのでした。

このお話には英語の他に大阪弁がふんだんに使われています。
受の新しい家族たちが皆、大阪の出身であるからなのですが
聞き間違いなどで
会話が時々噛み合わなかったりする所がとても面白かったです。
同じ国の言語だというのに、ことばって本当に不思議…。

普段使わないことばの力を借りると、
言いたくて言えなかったことを
心の奥から引き出す魔法の作用が働くのかもしれません。
攻が教えてくれた呪文は、とてもシンプル。

「好きやねん」。

私もその力を借りて、言わせて下さい。

あとり硅子さん。
ありがとう。



※漫画家のあとり硅子さんは、2004年7月6日に他界されました


リンゴが落ちても恋は始まらない
松前侑里/麻々原絵里依(ディアプラス文庫/新書館)

私立高校の物理教師×英語教師(理事長の息子)。職場モノ、同居モノ。
一冊丸々書下ろし一本、ショートとかは付いていません。
この作家さん初めての、同じ年カップル作品の単行本とのこと。
そのせいか、いつもと心持ちキャラが違っていたような気がします。
特に攻が。

従来の性格に無神経さをプラスするとこういう攻になってしまうのか‥と、
ちょっとばかりノーサンキューな、我が道を行くお人でした。
でも手打ち蕎麦を打てたり家電の修理がオールOKだったりは
ポイント高いな。うん。
便利そうっていう本音もありますが、身近で利便性の高い技能だからこそスゴイ!
って素直に思わされます。‥って、やっぱり便利そうだからだな(笑)。
一家に一人欲し〜。

欲しいといえば、そんな攻の自作機械etcが可愛いかったです‥‥!
「おはよう。起こしてくれてありがとう。」と声をかけて止まる目覚し時計、
球体のお掃除ロボット。
作った人間の心の温度がどこかしら感じられました。

受は従来のような、傷心のワガママお姫様キャラではなくて、
一見すると厭世観漂うクールな王子様キャラというかんじでしょうか?
ワケあって(そのワケっていうのは、公式あらすじの通りです)
一緒に暮らすことになった攻を疎ましく思います。
けっこう容赦のないかんじでポンポン文句を言っています。

第三者の計らいで始まった二人の同居。
私はてっきり、実は攻はもともと受のことが好きで――
というお話かと思っていました。ええ、違います。
私的にはたっぷりの片想い描写に萌える傾向があるので、
そういう展開を期待していたのですが。でも。
疎ましさが好ましさにゆっくり化学変化していくような、
全く違う放物線を描いていた二人が徐々に重なっていくような、
そんな恋愛の過程をとても楽しんで読めました。
たまには自分の萌え法則に逆らってみるのもいいものですね?

とか言って、同じ年カップルというところは元々のツボなんですが。

次回の本は、六月予定とのこと。
作家さんご本人が後書きで流星本と告知されてます。
おそらく、雑誌掲載時のタイトル「星に願いをかけないで」
(昨年の小説ディアプラ夏号)だと思われます。
あさとえいりさんが、やや睫多めと繊細なタッチで
挿絵をされていたのが印象的でした。
高校生の同級生モノで、七夕ネタです。
書き下ろしはどういうかんじのものを持ってくるのかな?
攻の少年の音楽がもっと聴いてみたいなぁ‥と、
お星様には願をかけずにひっそりとここで呟く一ファンでした。